草枕(東京)
2026.01.31

草枕(東京)

Shop guide

喫茶店を訪れる理由

心に余白をつくりたい。そう思ったとき、ふと浮かんだのが喫茶店でした。日常から少し距離を置き、新鮮な気持ちで、自分の中に交差するさまざまな感情と向き合い、整理したくなる時があります。その時、お気に入りの落ち着ける場所に身を置けば、不思議と前向きに取り組めます。東銀座に来たのでせっかくたがらと新橋まで足を伸ばして、「草枕」を訪れました。

侘び寂びを感じる門構え

店名が縦書きで記され、白い暖簾がかかっています。その左方にはもみじなど植木が涼しげに置かれています。喫茶店らしからぬ、侘び寂びを感じる門構えにギュッと心を掴まれました。

本とコーヒーの持ち味

奥のカウンター席には、文庫本が揃った本がずらりと並んでいて、その様子は圧巻です。木の家具に囲まれた空間な中で、本の赤や黄色の背表紙がアクセントになっています。カウンターの上にはレコードプレーヤーが置かれ、店内で流れているレコードのジャケットがその横に飾られています。コーヒーには、やはり本が似合います。

人を錯覚させながらもハイにしないのがコーヒーの持ち味。コーヒーの批判力はあくまでクールだ。熱狂は似合わない。であるからこそカフェは、文学、音楽、化学の揺籃地となりえた。/若林恵「さよなら未来」岩波書店

感覚を研ぎ澄ませ、冷静さを与えてくれるコーヒーは、本を読む者にも、本を書く者にも必要ような飲み物だと思います。落ち着いた空間でコーヒーを片手に本を開くと、必要な言葉や情報が、ふと手元に落ちてきて、感情や考えを整理しやすいように思います。

喫茶店という芸術

コーヒーは、ただの嗜好品ではないと実感します。コーヒーの入れ方、飲み方、提供される空間が進歩すれば、作法となり、道となり、芸術となる。喫茶店、とりわけ草枕のような喫茶店には芸術という言葉が似合います。陰影のある空間と、厚みのある半円のテーブルに惹かれ、この席に腰を下ろしました。ブレンドコーヒーは濃さを3種類から選ぶことができ、「ふつうめの」のコーヒーと、自家製チーズケーキをオーダー。このテーブルにコーヒーが置かれた姿があまりにも美しく、見惚れてしまいました。少し苦味のあるコーヒーに、チーズケーキの風味がよく合います。マスターが静かに珈琲をいれる姿、奥様がせっせと品のある声で配膳される姿も心地よい喫茶店です。

マスターは大坊珈琲に影響を受けたそう
これを芸術と言わず、なんという

カフェよりも喫茶店

三年前、無垢の木の心地よい家に越してきてから、外に求める空間は変わりました。家が十分に心地よくなった今、惹かれるのは「おしゃれさ」や「新しさ」よりも、時間を重ねてきた歴史と、静かに身を委ねられる空間。カフェよりも、良い喫茶店。それが、今の私の気分なのです。忙しない街の片隅にこんな素敵な喫茶店があることを感謝したくなる、お気に入りの喫茶店に出会えました。

しっとりとして美味しい、自家製ケーキ

この喫茶店に身を置いた時間のことを、銀座・新橋エリアを歩いた記録としてnoteにまとめています。
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草枕

新橋、内幸町方面にある、和のエッセンスが利いた唯一無二の喫茶店。日・月が定休日です。
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