倉敷美観地区に佇む宿
旅の雑誌をめくっていると目に留まったのが、倉敷にある滔々です。シンプルで、和のエッセンスが入ったモダンな空間がなんとも気持ちよさそうです。倉敷には、東京駒場に次いで日本で2番目にできた民藝館があるため、訪れてみたいと思っていました。滔々は、美観地区の大原美術館の分館の裏にあり、倉敷民藝館にも近く、美観地区の散策や民藝の歴史に触れるには好立地です。
手仕事、器好きにはたまらない
滔々はもともと手工業を扱うギャラリーを運営しており、手工業をコンセプトにした宿が誕生しました。お部屋は、今回宿泊した「町家の宿」と「二階の宿」があります。ギャラリーで並んでいる器を実際に試せるのも、この宿の楽しいところ。季節のフルーツが盛られたお皿を愛でたり、用意された紅茶やコーヒーをお気に入りのカップに入れてたのしめます。
また、この器はこんな使い方もいいなぁという生活のヒントがたくさん見つかります。お手洗いの棚に置かれた、花に目が止まりました。庭先で咲いた花を切って、ちょっと活けてみましたというさり気なさと、その花の魅力を底上げする器との関係性が素敵です。滔々の工芸ギャラリーも必見です。宿泊者には嬉しいおまけがあるかもしれません。
岡山の魅力をたっぷり詰め込んで
古民家を利用した町家の家は、岡山にゆかりのあるものがあちらこちらに。岡山を拠点に活動されている伊藤環さんのランプシェードや、森本仁さんの備前焼のスツールが使われています。備前焼(びぜんやき)とは、岡山県備前市周辺を産地とする陶磁器の一種です。その他にも、万成石の床など、岡山ならではの設えがたくさんありました。
美観地区散策の拠点として
町屋の家から徒歩5分くらいの距離に、倉敷民藝館があります。初代館長の外村吉之助によって集められた、アジア、アフリカ、ヨーロッパなど世界各国の工芸品の数々は圧巻です。特に、籠とガラスの取り合わせが、今見ても新鮮に感じる美しさがありました。大原美術館の東洋館も、民藝を学ぶに外せない場所です。民藝館と合わせて見学されることをおすすめします。
朝ごはん用のパンは着いた日に食べてしまったため、朝は林源十郎商店の1階に入っているcafe gewaで食べることに。京都のオオヤコーヒーの豆を使ったおいしいコーヒーに、ボリュームのあるごちそうトーストが食べられます。宿が美観地区の中心にあるため、どこへいくにもアクセスが良いのも嬉しいポイントです。
手仕事の美しさを見つめ直すところ
倉敷の美観地区は、職人による建物とそれらが生み出す美しい町並みが保存され、昔の美しいものも大切に保管されていています。代々この土地で根付いて生きた工芸や、工芸に対する眼差しが新しい世代へと受け継がれていることも感じられます。普段の生活に手仕事の美しさを取り入れたくなるきっかけがたくさん潜んでいるところでした。
滔々 toutou
町屋の宿、二階の宿があります。倉の宿が来年春ごろオープン予定だそうです。