富山駅からトラムに乗って
富山駅から出るトラム(路面電車)に乗って約25分の、古い町並みが残る岩瀬エリアを目指します。トラムは街なかを走っているときはゆっくりですが、専用線路に変わるとスピードアップするのも密かなお楽しみポイントです。「東岩瀬」で下車し、10分ほど歩くと美しい町並みが見えてきました。
岩瀬ってどんな場所?
江戸時代後期から明治時代にかけて北前船の交易で栄え、その町並みと文化を垣間見ることができる富山市北部の人気エリアです。歴史ある古い町なみを生かしながら、ミシュランを獲得したお店や、おしゃれな食料雑貨店、富山のお酒を楽しめる酒蔵や酒屋が並び、新しい富山の魅力を発信する大人なスポットでもあります。
町を散策
なにこの素敵な町。それがこの町を歩き始めたときに抱いた感想です。旦那さんに連れられ予備知識なく来たのもあり「つりや」の外観を見たとき、なんだ!?この古きを上手く生かしたお店は!と、この町のポテンシャルをむくむくと感じました。
つりやは、魚の都、富山県氷見市で150年以上商いを続けてきた魚問屋で、食のセレクトショップも営まれています。つりやオリジナルの、旬を閉じ込めた海の幸の保存食や、富山氷見のワイナリー、セイズファームのワインやジュースなどを扱っています。なんと、つりやの2階は1日1組限定(4名まで宿泊可)の宿泊施設になっています。宿からは、割烹、フレンチ、イタリアンなど富山でも指折りの名店が徒歩5分圏内。心ゆくまで岩瀬の食事やお酒を楽しみ、このお宿に戻ってバタンと寝る…幸せな旅が想像できます。
つりや東岩瀬
つりやオリジナルの海の保存食のほか、国内問わず丁寧に作られた調味料や食材、富山の作家の器も販売されています。2階は1日1組限定のお宿で、和の趣のあるミニマルな空間です。夕食はなし、朝食はオプションです。
お目当てのギャラリー
旦那さんのお目当て、釋永岳さんのギャラリーへ器を見にいきました。予約制と知らずに来てしまったため電話をしてみたところ、急遽お店を開けてくださいました。釋永さんの器は、富山の山奥にある、知る人ぞ知るミシュラン星つきレストラン「L’évo(レヴォ)」でも使用されており、まるで木の年輪のような陶器「áge(アージュ)シリーズ」が人気の作家さんです。
GAKU ceramics
息を吹き返した岩瀬のまち
お皿を案内してくださった声の素敵な女性から、この岩瀬エリアは、16年前は町も古くなり、電線がぶらっとたれ、お世辞にも綺麗な町とはいえなかったそうです。街の再開発とともに電線は地下に埋められたり、軒下に配線する無電柱化が進められ、より古い町なみが生きる現在の姿になりました。(町なみのbefore/afterはこちら)そのお話に、そうかこの街も最初からこんなに素敵だった訳ではないのかとその背景に興味を持ちました。
岩瀬まちづくり会社の発足
1998年ころから始まっていた、岩瀬の老舗酒造会社の5代目社長、桝田隆一郎さんによるまちづくり。まちづくりに関する仕事に素早く対処するため、2004年に「岩瀬まちづくり会社」設立。16年前、富山駅・岩瀬を結ぶライトレール(路面電車)が開通したのを機にその動きは加速し、桝田さんは老舗店の信頼と人脈をもって様々な問題を解決していきました。
目的をもって訪れてもらう町を目指して
「資源を活かして、魅力的な町に再生する」動きに対し、当初一部の住民たちの反対がありました。地元住民たちは、静かな町がまちづくりによって観光地化され、騒がしくなるのではという不安を持ちました。観光客が増えても利益になるのは商店や土産物屋だけ、住民には関係がないという声もありました。古く、活用されていない建物がある一方、土地に何人もの所有者の地権があり交渉が難航したり、岩瀬の土地を県外の人(よそ者)には売りたくないなどの問題があり、古く、壊される運命にある建物の利活用が進みませんでした。岩瀬まちづくり株式会社は「大型観光地にするのではなく、来街者が目的をもって岩瀬を訪れるまち」を目指して、こうした課題解決に尽力しました。
参考:http://g.kyoto-art.ac.jp/reports/1148/
建物を生かして人を招く
では実際にどんなことをされたのでしょうか。かつて営まれていた材木店の建築物を買い取って、そこに1軒の蕎麦屋を招きました。さらに、やはり解体されてしまう運命にあった古い家屋を入手して、それぞれの伝統工芸の作家や料理人を招きました。こうした動きの中で、つりやのアンテナショップや釋永さんのギャラリーができたようです。
参考:https://www.b2b.alibaba.co.jp/aj-press/000724/
古い町なみと、食を楽しむところ
どんなにいい建物も、メンテナンスされ人に活用されてこそ生きる。建物という箱を盛り上げるのは、やはり人なんだと感じました。また、まちづくりにあたり地域住民へ成功事例をみせながら、建物の修復は強制せず、自主的に判断してもらったというエピソードに、不安もあろう住民の気持ちとの程よい距離の取り方に感動しました。岩瀬は、食やお酒を楽しみたい方、古い町並みが好きな方にはぜひともおすすめしたい大人なエリアです。次は是非とも食事を楽しみたいです。