ちょっと背伸びをして
大切な友達と2年ぶりの旅行で、金沢を訪れました。食欲の秋ですし、私たちも大人になった訳ですし、ひとつずつ出てくる料理をゆっくり楽しむのもいいなと思い、夕食に6席のカウンターしかない割烹料理を予約しました。
扉を開けたその先には
引き戸を開けると、私たち以外のお客様は既に入っていて、店主は料理の準備に取りかかっています。コートをかけて、椅子に腰掛けると、飲み物を頼みました。(私たちは下戸なので、冷たい緑茶です)あとは店主のおまかせ料理が出てくるのを待ちます。土壁には器用の木棚が取り付けられており、お店に馴染む茶色や朱色のお皿が並んでいます。コックピットのような小さな料理場で手際よく手を動かす店主。店主の手からどんな料理が生み出されていくのかわくわくします。
美意識を感じる料理
お豆腐に始まり、徐々に濃厚な料理へと変化していきます。ここで紹介するのはほんの一部ですが、ぶりの醤油漬け、ほろほろ大根の牛肉添など、それぞれは食べたことがある食材の新鮮な組み合わせが印象に残っています。お皿と料理の色味が一部リンクしていて、まとまりが良く、次はどんなお皿が使われるのか、終始じっくりと見つめていました。
土鍋で炊き上がったご飯
ぷっくりとした土鍋には、さつまいもご飯が炊き上がっていました。店主が土鍋のご飯をかきまぜると、さつまいもの香りがふわっと立ち上ります。お茶碗によそってもらったご飯は、少しお焦げがついています。お米を食べることひとつをとっても、ただ食べるだけではない、味覚、嗅覚、視覚…と五感を使って食べる歓びがありました。
お抹茶とデザートの〆
お店の角にぽつんと置かれたお茶道具の謎が解けました。最後は店主が立てた、きめ細やかなお抹茶と、ココアとあんこを混ぜた和洋折衷なお菓子で締めくくり。お茶を立ててもらう時間が、これから食す楽しみをさらに盛り上げてくれます。これぞ、おもてなしの力です。
台所は店主の舞台
小さな台所で、器を蒸して温め、鍋で次の料理を作り、台にはお皿を並べる。湯気と料理の香りが立ち込める中、店主の無駄のない動き、リズム、所作にうっとりしながら次の料理を待ちます。料理が生まれる全ての瞬間が芸術で、目も心も、お腹も満たされました。あの台所は間違いなく店主の舞台でした。
竹千代
定休日は日曜日。2021年には食べログの百名店にも選出されています。十数品のおまかせコースのみで、予算は1万~1.5万円程度です。