ポートランド発、“フレンドリー”なホテル
Aceホテルの本拠地は、アメリカオレゴン州のポートランドにあります。ポートランドは日本の雑誌にもよく取り上げられ、POPEYEの「ポートランドに行ってみないか?」特集(2014 July,No. 807)でこの街のランドマークとしてAceホテルがあることを知りました。宿泊客でないと入りづらいホテルではなく、宿泊者に混じって地域の方も利用できるアットホームなホテルのあり方に衝撃を受け、わくわくしたのを覚えています。ロビーから繋がるカフェがあり、街の散策に使えるレンタサイクルがあるのも画期的でした。今では当たり前になった併設カフェやレンタサイクル、「地域コミュニティの文化的ハブ(拠点)」となるホテルのあり方は、Aceホテルが先駆けです。
ついにAceホテルが京都にやってきた!
そんな憧れのAceホテルが京都・新風館内にオープン。アジア初進出を果たしました。京都のコンセプトは『East Meets West』。大正時代に建てられた旧京都中央電話局の意匠を生かした建築デザインは隈研吾さん、ロビーや客室内のアート制作は、染色家の柚木沙弥郎さんが手がけています。外国の方から見た東洋、日本文化にはっとさせられることが多く、このAceホテルにはどんな驚きが待っているのか、胸を躍らせながら訪れました。
カフェのようなロビーと、象徴的な照明
ポートランドのフレンドリーな雰囲気はそのままで、まるでカフェのようなロビーには、仕事をしたり、寛いだり、人々が思い思いの時間を過ごしています。ロビーには、受付とAceホテルオリジナルグッズが並ぶコーナーがあります。インテリアデザインはこれまでもエースホテルを手がけてきたアメリカのコミューン・デザインが担当。京都産の杉を使った隈研吾さんによる木組みに呼応するかのような、無機質な素材を使ったコミューン・デザインの照明が印象的です。有機質と無機質の融合。これぞ、『East Meets West』の体現です。柚木沙弥郎さんによって描かれたポット柄のタペストリー奥には、サードウェーブコーヒーを牽引する「スタンプタウンコーヒーロースターズ」があります。
日本の作家や職人によるアートワーク
Aceホテルがこれまで大切にしてきたのは、地元クリエイターとのコラボレーションです。照明を兼ねた部屋番号には柚木さんの字が使われていて、木と和紙にクラフト感のあるフォントが好相性です。部屋に入ると、これまた柚木さんによるアートがドンとお目見え。お部屋のシンボルになっています。ベッドサイドには、ミナペル・ホネンのウロコ柄がキュートな照明があり、レコードプレイヤーの近くには、小菱屋忠兵衛の照明がぼわっと光っています。簡素なパネルか使われることが多い「起こさないで」「清掃不要」などのサインには松野屋の小さな箒が使われています。なんとチャーミングな発想なんだろうと心を掴まれました。ルームキーは、木製で版画のようなデザインです。こうした小さなアイテムにも、デザインを大切にする遊び心が豊かだなぁと思います。
水回りのデザインと環境意識の高いアメニティ
木と黒のコントラストが印象的なシンプルな洗面台。木だとぼやけてしまうところに黒が入るところでインダストリアルな雰囲気になります。細かい身だしなみチェックができる拡大鏡も備え付けられています。バスルームのアメニティはウカで統一されており、乾燥しがちなホテル空間にボディローションまで用意されているのは嬉しいポイントです。環境意識が高く、アメニティのパッケージは紙製、歯ブラシは竹製です。パッケージにも柚木さんの文字が使われていて、細部までぬかりない、楽しいデザインです。
竹製歯ブラシ、歯磨き粉、コットン・綿棒(上から時計回り)
何系にも収まらないインテリア
日本のエッセンスを感じるものの、そこにスチールなど西洋のインダストリアルな雰囲気がミックスされ、簡単に和風と割り切れないインテリアセンスがいいなぁと思います。クラフトに造詣が深いアメリア人が、日本を旅したときに購入したお気に入りのアイテムを取り入れてお部屋を作ったら、なんかいい感じになった、そんな雰囲気でしょうか。一緒にお部屋で寛いだ友人が「これは何系っていうんやろな!?」と言った言葉がまさにだと感じました。『East Meets West』のコンセプトが機能しているということですね。
朝ごはんはスタンプタウンコーヒーで
コーヒー好きな方なら一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。アメリカポートランド発祥のサードウェーブコーヒーの火付け役的な存在「スタンプタウンコーヒーロースター」がロビーに隣接しています。日本で楽しめるショップは唯一ここだけです。朝7時からオープンしているので、こちらでカフェラテとクロワッサンをいただきました。カフェラテの苦味とミルクの甘味のバランスがよく、美味しいカフェラテに巡りあえて嬉しくなります。天井には組み木になったポップな照明、窓には韓国のポジャギスタイルを元にしたアダム・ポーグさんの作品があり、ウッディな中に色のアクセントが効いた空間が広がっています。フレンドリーな接客に、良い空間で美味しいコーヒーをいただける、私的ポイントの高いカフェでした。