
豊かな緑と湯の癒しを求めて
寒暖差の大きい4月も末、豊かな緑と湯の癒しを求めて、山口県・長門湯本温泉を訪ねました。長門湯本温泉は、今から約600年前の室町時代に地元・大寧寺の禅師が住吉大明神からのお告げで発見したとされています。山口県で最古の歴史を持つ温泉です。音信(おとずれ)川の川べりに温泉宿が立ち並ぶ風景は、どこか懐かしさを感じさせる「日本の湯町」そのものです。

プーチン大統領も癒した温泉
温泉街から少し外れたところに、1881年創業の名宿「大谷山荘」があります。2016年に安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が日ロ首脳会談を行った場所としても知られています。安倍首相が「疲れがとれる」と紹介した温泉を堪能するため、日帰り温泉を利用しました。
旅館の風情と和のおもてなし
エントランスに続く坪庭にししおどし、窓際や廊下のコーナーのあちこちに、季節の移ろいを伝える生け花たち。ゆったりした時間が流れるロビーラウンジからは滝と緑が望め、厚いじゅうたんが敷かれたパブリックスペースは隅々まで清潔です。旅館の風情と、静かな心配りが行き届く和のもてなしの快適性が盛り込まれており、老舗旅館ならではの安心感があります。

2階まで吹き抜けの開放感と木の重厚感が共存するロビーラウンジ
せせらぎの湯とこもれびの湯
大谷山荘では、長門湯本の温泉を二つの大浴場で愉しめます。泉質はアルカリ性単純温泉で、湯あたりを起こしにく「家族の湯」とも呼ばれています。会場で異なる景観、多彩な湯舟が用意されています。今回は2階のこもれびの湯に入りました。

広々とした脱衣所と湯上がり処
扉をガラガラと開けると、広々とした脱衣所とドレッサーが目に留まり、さらに進んでゆくと眺めの良い湯上がり処があります。脱衣所の間にはベビーベッドが用意されていて、赤ちゃんとママからご高齢の方までゆっくり楽しめる設備が整っています。温泉の入り口付近にはお水が、待ち合わせにも使える湯上がりラウンジには黒豆茶が用意され、過不足のない用意に老舗旅館とはこういうものかと、まざまざと感じます。
優しい風が心地よい半露天風呂と広々とした内湯
こもれびの湯の顔である半露天風呂からは、音信川の渓谷と里山の懐かしい雰囲気が広がっています。木に囲まれた浴槽には、優しく頬をつたう風が通り抜け、ずっと入浴していられるような心地よい空間です。

内湯の開放感のある大きな浴槽からは、山々の景観が広がります。ほの暗い浴槽からみる、新緑の山々のコントラストは圧巻です。そのほかにも枕木に頭を乗せて、全身を伸ばしてのんびりできる寝湯、山の斜面に面し、まるで森林浴をしているような気分になれるハーブ湯、サウナがあり、様々な湯船を愉しめます。
湯上がりは館内をぶらり
2階のこもれびの湯を上がって、奥へ進んでいくとお土産処「山茶花」があります。「食を通じて山口県の魅力を堪能してほしい」をテーマに、地酒や地元の食べ物が取り揃えられています。食だけでなく、ちょっとした贈り物に使えそうなベビーグッズから手仕事の道具もあり、以前から欲しかった黒文字の楊枝を購入しました。


長門湯本温泉の甘くて美味しいもの
温泉街には、甘くて美味しいものがたくさんあります。湯上がり前後のちょっと小腹が空いた時にぴったりなお菓子をふたつご紹介します。
一つ目は、吉富幸進堂のわっふるです。クリームとこしあんを購入し、どちらもコーヒーとよく合い美味しいのですが、中でも感動したのはクリームです。むっちりした生地の中に、たまごがたっぷり使われた優しい味わいのカスタードがぽってりと入っています。シュークリームが好きな方は興奮ものだと思います。できるだけ手作りにこだわっているため、1日に作れるのは400個くらいだそうです。


二つ目は、瓦そば柳家のみたらし団子です。注文を受けてから焼き上げてくれるお餅はもちもちしつつも、ふわっと軽く、直ぐに平らげてしまいます。

老舗の風格と安心感のあるおもてなしに、ちょぴり贅沢して行って良かったと思える、唯一無二の体験がありました。