
恋焦がれて
大好きな伊藤まさこさんのインテリアに、度々岡澤さんのピッチャーを見かけました。石を入れたり、植物を生けたり、コーヒーのピッチャーにしているのを見て、使い方が何通りもあって、白くてニュートラルな形がいいなと思っていました。なので、伊藤まさこさんがほぼ日で営むお店「weeksdays」で販売のお知らせが出た時からとても楽しみにしていました。
待ちに待った販売
かつて岡澤さんのピッチャーが欲しくてオンライン上を探しまわりました。しかし、どのオンラインサイトでも売り切れていて、新しい個展のお知らせもありませんでした。weeksdaysのコラムで、2019年に陶芸を辞められ、現在は違う仕事をされていると知り、だからだったのかと納得しました。そんな中、伊藤まさこさんの働きかけで、岡澤さんのピッチャーが陶芸からプロダクト(工場生産)として蘇ることになりました。こんなに可愛いくて貴重なピッチャーならすぐに売り切れてしまうと思い、発売時間にスタンバイして無事購入することができました。
ふとしたシーンもかわいい
家に届いてすぐ、まずはキッチンのディスプレイ棚にピッチャーを並べました。棚に置いている時はもちろんのこと、使用後キッチンに置いている姿も、洗い物ふせに置いているときまでかわいい。使い勝手も大切ですが、何気ない瞬間も感じがいいと思えるのもまた、良い物の条件なのかなと思います。

注ぎ口の工夫とぽってりとしたフォルム
プロダクト版では、洗いやすさを考えて、陶器を作る際にはつけていた注ぎ口の突起を無くされたのだそう。そのことで、水切れをどうやってよくするか、岡澤さんの前に新たな壁が立ちはだかりました。ものの濡れる仕組みや、界面活性剤の働きを学びながら試作を繰り返し、2年の歳月をかけてようやく完成したそうです。今回発売されたものが、満足のいく水切れ具合とかわいいフォルムの最適解。少しふっくらとした姿は、穏やかな気持ちになれるようにと、「寒い朝に少し膨らんだ鳥」をイメージされています。シンプルな中にもたくさんの工夫が詰まっています。

手でつくっていた頃の、ピッチャーの注ぎ口先端部分。(weeksdaysコラムより引用)

良いものは振るまいを要求する
私は毎朝、コーヒーを飲みます。グラインダー付きのコーヒーマシーンを買ってから、ドリップすることはほとんどなかったのですが、この愛らしいピッチャーが来てからは、「このピッチャーを使いたい。」そんな気持ちが、私を“コーヒーをドリップする”という行為に向かわせます。今は夏なので、ピッチャーに氷をたっぷり入れてポタポタとドリップする、そんな静かな時間を楽しんでいます。以前、家具の研究家である織田憲嗣さんがYouTube動画で「本当に良いものはそれを使う人に振るまいを要求してきます。」とおっしゃっていました。例えば、フィン・ユールの気高い椅子に、上半身裸でパンツ1枚で座るなんてことはあってはならないと。久々にコーヒーをドリップする行為を通して、良いものには、使用者へ振るまいを要求してくる。そんな人と物の関係があることを身をもって体感しました。

