調理室池田(神奈川)
2026.05.16

調理室池田(神奈川)

Shop guide

市場の中にある、という魅力

川崎中央卸売市場北部市場には、一般に開かれたエリアがあります。食料品店や日用品店が立ち並ぶその一角に、池田調理室があります。働く人々のための市場という場所にあるカフェ。その在り方に強く惹かれ、この場所を訪れました。

パンとコーヒーの香ばしい香りに誘われて

朝、8時30分。お店に着くと、すでに数人の列ができていました。パンとコーヒーの香ばしい香りが漂い、空いていたお腹がさらに刺激されます。大きな窓から店内を眺めると、スコーンサンドやバナナブレッドがキッチンに並んでいます。

軽い食べ心地のスコーンサンド

境界線を無くした、オープンキッチン

カフェスペースとキッチンは、仕切られていることが多いですが、ここでは手元さえも隠さない、完全なオープンスタイルです。キッチンには、美味しそうなケーキが並び、調理される様子を間近に見ることができます。そのライブ感もまた、このカフェの魅力のひとつです。

名物ツナメルトサンドと、期間限定のミルクレープ

ツナ缶のツナサンドだと思うことなかれ。自家製のマグロのオイルで煮たツナが、サクサクのパンに挟まれています。自家製マヨネーズと、シャキシャキとした香味野菜がアクセントになり、思わずもう一口と手が伸びる美味しさです。

かわいい、パリの大衆食堂で使われていたお皿

春になると登場するというミルクレープ。生地も生クリームも軽やかで、大きな一切れも、気づけば食べ終えています。ゴールデンウィーク頃まで味わえるそうなので、ぜひコーヒーと一緒にどうぞ。

市場に漂う、異国の空気

海外の市場へ行くと、どこへ行っても必ずと言っていいほど気持ちのいいカフェがあります。スェーデンの市場には、新鮮な魚介類を使ったスープが自慢のカフェがあり、市場とカフェがごく自然に共存していました。一方で、日本では意外にもそうした風景は多くなく、どこか新鮮に感じられます。このカフェには、地に足のついた安心感がありながら、海外の食器が使われていたり、揃いすぎていないビンテージ家具が並んでいたりと、どこか異国に来たような、軽やかな心地よさがあります。

ここでなかったら、お店をやらなくていい

池田調理室の店主であり、料理家の池田宏実さんは、「ここでなかったら、無理してお店はやらなくてもいいと思っていた」(クロスディー)と語っています。この市場は、宏実さんが料理の仕事をされる中で、仕入れのために通っていた、馴染みの場所でした。北部市場で空き店舗を見つけたものの、もともと個人への貸し出しは想定されておらず、一度は、川崎市から倉庫を飲食店として使うことはできないと断られます。それでも、市や市場関係者と対話を重ねる中で、卸売市場法の改正という流れも重なり、池田調理室は、この場所にひらかれることになりました。

あるもので、お店を作っていく

この場所でお店を営むには、市場で働く人々にとっても、一般のお客さんにとっても、どちらにとっても必要な存在であることが求められると思います。パンが食べられる場所がなかった市場の声をきっかけに、市場で手に入るマグロを使い、働く人が手軽に食べられるようにと生まれた、名物のツナメルトサンド。市場で働く人々へのリスペクトと、この場所の背景を大切にしながら、宏実さんのセンスが重なり合うようなお店のあり方に、強く惹かれます。

「店をつくるとなると、借金をして何もかも万全に揃えるのが当たり前だけど、無理せず、やれるところから始めたらいいと思います。」(クロスディー)

宏美さんがそう語るように、最初はコーヒーカップもなく、紙コップからのスタートだったといいます。店で使われている器も、アンティークギャラリーで扱う予定だったもの。オープン前、なかなか器が決まらず、「とりあえずあるもので」と使いはじめたものが、今では定番として根付いているそうです。無理のないかたちで始めたことが、結果として、その店らしさになっていく。それは、これまで培ってきた池田ご夫婦の感性があってこそだと思いますが、そんな地に足のついた在り方に、心を掴まれました。また、季節が変わる頃に朝ごはんを食べに行きたいと思います。

調理室池田

水・日・祝日はお休みです。営業スケジュールはこちらをご確認ください。

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